本ページでは無線機の基本である変調・復調について基礎事項をまとめてみました。
数式だけでは分かり難いものは、アプレットを使用して動作をビジュアルに確認できるようにしてみました。
※Javaアプレットを実行するためには、Javaランタイム環境(Java Runtime
Environment バージョン 5.0以上)が必要です。
ダウンロードサイト:http://www.java.com/ja/download/download_the_latest.jsp
無線モジュールを使用したアプリケーションを検討されている開発会社の皆様にとっては、この無線機で何ができるかが重要なことで、内部で何が行われているかはあまり重要ではないかも知れません。しかし、システムに採用した無線機がどのような物なのか、知っている必要があると思います。皆様が作製した(する)無線システムについてお客様に説明する場面できっと役に立つでしょう。

情報を電波で飛ばすために、無線機の内部では変調・復調動作が行われています。変調方式には様々なものがありますが、無線機がどの変調方式を採用するかは、性能や製品コストの兼ね合いで決定されます。例えば、弊社が提供している無線機の多くは周波数変復調方式と呼ばれるものですが、この方式を採用しているのは、変調過程で周波数に情報を載せているので雑音に強く安定通信が可能で、歴史が古く技術が確立されていており、比較的低コストで無線機を作ることが可能だからです。
皆様は、現在の地上デジタル放送や携帯電話で使用されている変調方式の技術的部分について知りたいと思ったことはありませんか。
そもそも変調・復調とは何でしょう。変調や復調を理解しようと色々と調べてみても、難しい数式や図ばかりで簡単には理解できないのが実情です。本には被変調波形が載っていますが、連続的に行われる変調の一部分なので、変調過程を理解するには十分ではありません。
本資料では、FM変調やAM変調などのアナログ変調から、BPSKやスペクトラム拡散通信、OFDMのようなデジタル変調の概要を説明し、変調の様子をjavaアプレットで体感できるようにしてみました。javaアプレットは実際にパラメータを動かすことができます。
さわり部分でしかありませんが、無線技術の基本である変調・復調についての理解の手助けになれば幸いです。
とは言っても、変調・復調は理論的に電子回路的にも、とても奥の深い分野です。詳しくは専門書で調べてみて下さい。
なお、作成した変調javaアプレットは、RF技術的にプログラム的に間違いがあるかも知れませんので、初めにお断りしておきます。間違いを発見された場合はご連絡をお願いします。また、お使いのPCによっては動作スピードが遅く負荷があることを、お断りしておきます。
変調・復調とはどのようなことでしょうか。例えば、会議室の内容を違う場所にいる人に配信する場合について考えてみます。会議内容である音声情報はマイクロフォンで電気信号に変換され、違う場所にあるスピーカから出力するものとします。
◇ベースバンド通信
この音声情報を有線で伝送する場合は、中間に増幅器を設け適切なレベルに増幅し、他所でスピーカで聞くことができます。音声情報はアナログ信号であり、レベル的に増幅するだけで、このアナログ信号の周波数帯域のまま伝送しています。音声情報は何も手を加えずアナログ信号として伝送することも、AD変換を行いデジタル処理に適したデジタル信号として伝送することもできます。何もしない場合はアナログ信号が、AD変換を行った場合はその信号自体が、ベースバンド信号になります。このような通信をベースバンド通信と言います。

◇搬送波通信
例えば1本の有線で複数の情報を送りたい場合はどうしたら良いのでしょうか。複数のベースバンド信号を単純に合成して送っても、ベースバンド信号の周波数帯域が重なっているため、受信側では複数の信号に分離することができません。そこで、複数の情報を何らかの形でそれぞれ違った周波数帯域に割り当て、1つの信号としてレベル的に合成し伝送することが考えられます。複数の周波数帯域は受信側で帯域フィルタで分離し、それぞれのベースバンド信号を取り出すことができます。ベースバンド信号に戻ったのであとはスピーカを鳴らすだけです。
このように、ベースバンド信号を違う周波数帯域に移すことを変調と言います。つまり、変調は移す先の周波数である搬送波(キャリア)に情報を乗せることで、このような処理を行う通信を搬送波通信と言います。
会議内容を無線で送る場合は、音声情報を何らかの手段で電波に乗せなければなりません。そこで搬送波通信が行われるのです。

◇変調
搬送波(キャリア)に情報を載せることを変調と言いますが、これは情報周波数帯域を搬送波周波数帯域に移すことです。搬送波周波数は伝送媒体の特性に適した周波数が使われます。後述しますが、変調は搬送波の振幅、周波数、位相のいずれかのパラメータを情報信号に従い変化させる操作です。
変調についての用語を統一しておくと、情報信号のことを変調信号(変調波※1、modulating
signal)と呼び、情報を乗せるための波を搬送波(キャリア:carrier)といいます。変調とは搬送波に情報を乗せることで、変調された信号波を被変調信号(被変調波:modulated
signal)と呼びます。通常、搬送波(キャリア)には正弦波が用いられます。また、大元の情報信号をベースバンド信号と呼びます。

※1:文献によっては変調された波(被変調波)を変調波と呼ぶこともあるので注意して下さい。
英語では変調信号はmodulating signal、被変調波はmodulated signalと呼びます。
◇なぜ変調するのか
・有線で複数のベースバンド信号を伝送する場合はその数だけの信号線が必要ですが、それぞれを違う周波数で変調し合成し伝送すると信号線は1本で済みます。
・有線の場合は、周波数の高いところに変調すると伝送漏れが少ない。
・無線の場合、電波法で用途に応じて決められている帯域で通信する必要があり、変調が必要です。
・無線の場合、被変調波周波数とアンテナの長さは密接な関係があり、変調することでアンテナ長を短くすることができます。
・変調することで、それぞれの帯域で性能を確保するための適切な増幅ができます。
・その他
特定小電力無線機等に使用される電波の周波数は非常に高く、100MHz~2400MHzです。この周波数に対して直接変調をかけるのは、感度、選択度、安定度など色々な問題が発生します。このため、実際には予め低い周波数で変調を掛け、その被変調波をさらに無線周波数で変調することが行われます。初めに行う変調を一次変調と呼び、後者を二次変調と呼びます。
◇復調(同期検波と非同期検波)
復調とは簡単に言うと、受信側で適切な処理を行い変調された信号からを元の情報を取り出すことです。スペクトラムでみると元の位置に戻す操作です。
復調方式には同期検波と非同期検波があります。
同期検波は受信側において、変調に用いた搬送波の周波数と位相が一致した信号を作り、この信号と受信信号とを乗算し復調します。この信号を再生搬送波とかローカル信号と呼びます。周波数や位相がずれた場合は追従しながら同期を取る必要が有ります。
非同期検波は、変調に用いた搬送波の情報を利用せずに復調します。非同期検波には包絡線検波や遅延検波、周波数検波などがあります。
同期検波を行った方がエラー率は低く性能も良いのですが、技術的に難しくハードウェアコストが上がってしまいます。
変調信号(ベースバンド信号)を時間tの関数m(t)とすると、変調とは搬送波C(t)に変調信号m(t)を乗せ、情報周波数帯域から搬送波周波数帯域に周波数を移すことです。変調は、正弦波搬送波の振幅、角度のいずれかのパラメータをベースバンド信号で変化させることで行われます。また、変調は振幅変調と角度変調に分けられ、角度変調には位相変調と周波数変調があります。その違いによって1、振幅変調、 2、位相変調、 3、周波数変調のように分類されます。
正弦波の搬送波C(t)は時間tの関数なので次のように定義できます。

Ac:振幅、Fc:周波数、Φc:初期位相
変調は、この搬送波の振幅Ac、周波数Fc、位相Φcのいずれか、または複数に情報を乗せることです。
振幅Acに情報を乗せる場合を振幅変調、周波数Fcの場合を周波数変調、位相Φcの場合を位相変調と言います。
1、振幅変調(AM: Amplitude Modulation)
2、位相変調(PM: Phase Modulation)
3、周波数変調(FM: Frequency Modulation)
変調信号を単一の正弦波とした場合の変調信号m(t)と搬送波C(t)のパラメータは下図の通りです。

◆各種変調方式の定義
変調は、搬送波の振幅、位相、周波数のいずれかのパラメータを、変調信号m(t)に比例変化させることです。
◇振幅変調:AM
振幅変調と言えばAMラジオの変調方式を思い浮かべますが、この場合の被変調波Samは次のようになります。
Kam:定数
AM変調は、搬送波振幅Acが変調信号m(t)に比例します。
AM変調は振幅項が少し複雑ですが、振幅変調としては下記式の方が分かりやすいかも知れません。後述しますが、これはDSB-SCという振幅変調方式です。
Kdsb-sc:定数
◇位相変調:PM
位相変調の被変調波Spmは次のようになります。
Kpm:定数
PM変調は、搬送波位相Φcが変調信号m(t)に比例します。
◇周波数変調:FM
周波数変調の被変調波Sfmは次のようになります。
Kfm:定数
FM変調は、搬送波位相Φcが変調信号m(t)の積分値に比例します。
位相変調の式と比較して、FM変調は変調信号m(t)を積分してから位相変調したものと言えます。
◆アナログ変調とデジタル変調
変調にはアナログ変調とデジタル変調があります。
アナログ変調とは、変調器に加わる情報信号がアナログ信号で、復調器からアナログ信号が出てくるものです。デジタル変調とは、変調器に加わる情報信号がデジタル信号で、復調器からデジタル信号がでてくるものです。扱う信号の性質をもってそう呼んでいるだけですが、変調器・復調器とその周辺回路はその違いに適切に対応したものになっています。
FM放送やトランシーバなどはアナログ変調・復調を行っていますが、最近ではデジタル処理関連技術が進歩しており、デジタル変・復調が主流となっています。デジタル変調は雑音に強く、エラー訂正ができたり、データ圧縮、狭帯域化、データの多重化などが可能となります。なお、デジタル変調で音声や画像などのアナログ情報を扱う場合は、送信側でデジタル信号化(符号化)を行い、受信側でアナログ信号に戻す操作(複号化)を行います。情報をデジタル化することにより、同じ無線方式で色々なことができます。また、デジタル変調はIC化が比較的容易(内部構造は複雑)で、調整箇所が少なくなり、低コスト、小型化、低消費電力化が可能になります。
アナログ変調は先に記述した通り、AM、PM、FMですが、デジタル変調の場合はASK、PSK、FSKで表し、以下のように呼び名にシフト・キーイングと付けます。
1、振幅シフト・キーイング(ASK: Amplitude Shift Keying)
2、位相シフト・キーイング(PSK:
Phase Shift Keying)
3、周波数シフト・キーイング(FSK: Frequency Shift Keying)

受信側で行う復調方式には、同期復調(検波)と非同期復調(検波)があります。
同期検波を行った方がエラー率は低く性能も良いのですが、技術的に難しくハードウェアコストが上がってしまうので、価格を睨みながら最適な方法が採用されます。
◇同期検波方式
同期検波は、受信信号と再生搬送波(ローカル信号)をミキサで乗算し信号を復調します。
つまり、同期検波方式は、送信側で使用した搬送波と周波数と位相が全く同じ信号を受信側で再生する必要があります。再生搬送波は、送信機と受信機の周波数ずれや、電波の伝搬時に起こるフェージング等に対して周波数・位相を追従補正する必要があります。

◇非同期検波
非同期検波は、変調に用いた搬送波の情報を利用せずに復調します。ただし搬送波情報を予め知っておく必要があります。非同期検波には包絡線検波や遅延検波、周波数検波などがあります。

AM変調はAmplitude
Modulationの略で、日本語では振幅変調と言います。振幅変調は、情報データである変調信号m(t)に比例して、搬送波Cの振幅を変化させます。振幅変調は昔からラジオ放送やテレビ放送など多く使用されています。振幅変調の種類としては、AM(DSB-WC)、DSB-SC、SSB-SC、VSBなど多くの方式があります。それぞれ帯域や送信電力、伝送品質などに関してメリット、ディメリットがあり使い分けられています。
詳細は”AM変復調のページ”をご覧下さい。下記のjavaアプレットで動作を確認することができます。
◇AM変復調アプレット
◇搬送波抑圧両側波帯変復調:DSB-SCアプレット
◇搬送波抑圧単側波帯変復調:SSB-SCアプレット
◇位相変調:PM
位相変調の被変調波Spmは次のようになります。
Kpm:定数
PM変調は、搬送波の瞬時位相を変調信号m(t)に比例して変化させます。
アナログ変調では位相変調はあまり使用されません。理由としては、周波数変調と特性がよく似ており敢えてPMにする必要が無いのと、ハードウェア的にもFM変調の方が簡単でコストが掛からないためです。しかし、PMは最近のデジタル変調技術と相性が良くPSKやQAMとして多く使用されています。
FM変調はFrequency
Modulationの略で、日本語では周波数変調と言います。周波数変調は、情報データである変調信号m(t)に比例して、搬送波Cの周波数を変化させます。周波数変調はFMラジオ放送や携帯無線機など幅広い分野で使用されています。これは製造コストが比較的安く、安定した性能が得られるからです。
詳細は”アナログ周波数変調・復調のページ”をご覧下さい。下記のjavaアプレットで動作を確認することができます。
◇FM変復調アプレット
◇FM被変調波のスペクトラム計算アプレット
FM被変調波のスペクトラムは第1種ベッセル関数で表されます。
デジタル振幅変調には、ASKやOOKなどがあります。ASKはAmplitude Shift
Keyingの略で、日本語では振幅シフト・キーイングと言います。OOKはオンオフ・キーイング(On Off Keying)と言います。
デジタル振幅変調は基本的にアナログ振幅変調と同じで、情報データである変調信号m(t)に比例して、搬送波Cの振幅を変化させます。
詳細は”デジタル振幅変復調のページ”をご覧下さい。下記のjavaアプレットで動作を確認することができます。
◇ASK/OOK変復調アプレット
デジタル位相変調PSKには、BPSK、QPSKなどがあります。PSKはPhase Shift
Keyingの略で、日本語では位相シフト・キーイングと言います。
デジタル位相変調は基本的にアナログ位相変調と同じで、情報データである変調信号m(t)に比例して、搬送波Cの位相を変化させます。
デジタル位相変調は、地上デジタル放送や無線LANなど最先端の無線機で使用されています。
詳細は”デジタル位相変復調のページ”をご覧下さい。下記のjavaアプレットで動作を確認することができます。
◇BPSK変復調アプレット
◇IQ変調によるQPSK変復調アプレット
デジタル周波数変調FSKには、FSK、MSK、4FSKなどがあります。FSKはFrequency
Shift Keyingの略で、日本語では周波数シフト・キーイングと言います。
デジタル周波数変調は基本的にアナログ周波数変調と同じで、情報データである変調信号m(t)に比例して、搬送波Cの周波数を変化させます。
デジタル周波数変調は、産業用途の無線機やBluetoothなど最先端の無線機で使用されています。
詳細は”デジタル周波数変復調のページ”をご覧下さい。下記のjavaアプレットで動作を確認することができます。
◇FSK・MSK変復調アプレット
◇IQ信号によるMSK・FSK変復調アプレット
スペクトラム拡散通信は、携帯電話や無線LAN、Zigbeeなどの最先端無線機に使用されています。送信側では情報データを拡散符号を使って広い帯域に拡散し、受信側でそのスペクトラムをかき集めデータを復調するようにしています。このことにより通信路で加わったノイズに対しても耐性があります。
詳細は”スペクトラム拡散変復調のページ”をご覧下さい。下記のjavaアプレットで動作を確認することができます。
◇スペクトラム拡散変復調アプレット
OFDMはOrthogonal Frequency-Division
Multiplexingの略で、日本語では直交周波数分割多重方式と言います。OFDM変復調は無線LANや地上デジタル放送で採用されている最先端の技術です。OFDMは沢山のサブキャリアを使用するので、周波数帯域を効率よく使用でき、ノイズに強いのが特長です。理論は昔から知られていましたが、エレクトロニクスの発展で、ようやく機能を小型ICに入れることができるようになりました。
詳細は”OFDM変復調のページ”をご覧下さい。下記のjavaアプレットで動作を確認することができます。
◇OFDM変復調アプレット